これまでにも遺伝的障害を受け継いでいるために免疫系に欠陥のある人たちの小さなグループがあったが、最近、臓器移植や癌治療の成功によって、またエイズの流行によって、免疫無防備状態の人たちが著しく増えてきている。
キラーT細胞は、体の高速道と間道を巡回してトラブルがないか探しまわる。
彼らは、自己に属するものなら何であろうと認めて受け入れるが、ウイルス感染細胞のような外来のものなら何であろうと排除する。
移植された組織や臓器は、それが新しい宿主にどんなによく適合していても、キラーT細胞にとっては外来物質(異物)であり、ゆえに破壊の対象である。
これを抑えるために、移植後の人たちは自己のキラーT細胞を抑制するための薬を服用する。
しかしながら、こうした薬は、移植された臓器を破壊するがゆえに不活化されなければならないT細胞と、正常に機能して感染と闘わなければならないT細胞を区別することができない。
ゆえに移植臓器をもった人たちは、ウイルスが免疫制御から逃れることができるために、ふつうの人たちよりも感染症にかかりやすいことになる。
彼らの体は、感染症と新しい臓器の破壊との間で身動きがとれない状態にあるのである。
移植レシピエント(被移植者)は、ドナー(提供者)から移植臓器とともに引き渡されたか、または移植以前からもともと体内に住み込んでいた持続性ウイルスと、特別な問題を引き起こす。
これらのウイルスのうち、EBVや、ヒト乳頭腫ウイルス、ヒトヘルペスウイルス8などは、潜在的な腫傷ウイルスである。
したがって、移植臓器を保護するために免疫抑制剤の投与量が増やされると、ウイルス免疫性が低下して腫傷発現の危険が増すのである。
これはまさにJ・Fの話のなかで心臓移植後に起こったことである。
彼女の場合、想定されるウイルスはEBVであり、腫傷はリンパ腫であった。
一歩一歩と一見したところ、ウイルス関連腫傷は古典的な感染病とは似ていないため、初期の癌研究者たちがウイルスによって癌が引き起こされることを信じなかったとしても不思議ではない。
彼らは、癌が一般に流行病として存在しないし、明らかに感染力をもたない、と言った点では正しかった。
また、大部分の腫傷ウイルスは広く人々にゆきわたっていて、まったく無害のまま宿主に生涯にわたり住みついている。
ウイルス関連癌の患者の数よりも感染した人のほうが多いことは明らかである。
なぜなら、ありふれたウイルスがまれな癌と関連しているからである。
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