すでに見てきたように、HIV感染の間に、莫大な数のCD4T細胞が一掃され、増援部隊も感染して破壊され、やがて損失分の補充ができなくなる。 それからはCD4細胞の数が着実に減少し始める。
通常は、血液一マイクロリットル(一リットルの百万分の一)に約一二00個のCD4T細胞があるが、これが約五00個にまで減っても別段悪い効果が現れることはない。 しかしこれらの細胞は感染に対する体の防衛において中心的な役割を果たしているので、その数が二00個という危機的に低いレベルに達すると、状況は悪くなり始める。

日和見感染症(好機に便乗するためにそう呼ばれる)が起こって、感染の最終段階、エイズが始まる。 これらの日和見感染症は、通常の環境下では無妻主に患者自身の体に棲んでいる微生物によって引き起こされ、ついには患者を殺してしまうのである。
それゆえ、エイズによる死の究極的な原因は必ずしもHIVであるとは限らず、その同居者である持続性ウイルスや、細菌や、菌類たちである。 人はそれぞれ体のなかに自分に特有の組合せとレベルの微生物をもっているので、エイズによる死は多種多様の形をとる。
地理的には、たとえば、アフリカでのありふれた微生物は西欧でのありふれた微生物と同じではないため、エイズの臨床像も異なるのである。 免疫系が働かなくなると、微生物はいつもの厳しい制御をもはや受けなくなり、大荒れに荒れる。
よく知られた感染症の、誇張された、異様な、まったく新しいタイプの症状発現は、体のどのシステムもそれぞれ特有の問題を抱えていることから起こるのである。 消耗性の病気はエイズの最もありふれた発現のひとつであり、とくにアフリカでは「スリム病」と呼ばれているほどである。
それには多くの要因が寄与している。 たとえば、単純疱疹ウイルス(HSV)や、鳶口情などの菌類感染によって、口や食道の潰傷化により食物をかみ砕いたり飲み込んだりする際の苦痛と困難が起こる。
ジアルジア、鞭毛虫類のひとつ、クリプトスポリジウム、胞子虫類のひとつ、エントアメーバ体内寄生性アメーバ、赤痢菌、サルモネラ菌?腸内細菌のひとつサイトメガロウイルス(CMV)、結核菌といった華やかな顔ぶれの微生物によって、慢性の難治性の下痢が引き起こされるかもしれない。 結核のような全身性の感染症ならどんなものでも、ひどい体重減少を引き起こすであろうし、また、これら感染症を寄せつけないようにするために取られる長期的な抗生物質治療でさえも、腸内細菌の正常な均衡を撹乱することによって、そうした症状に貢献するかもしれない。


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