就職ナビのしくみ

仕事ができる云々以前の、せっかくの人生をおもしろく生きられるか、つまらなくしてしまうかという「快楽の問題」だろう。 楽しく快適に生きるために、このことをぜひ肝に銘じておこう。
会社は、あなたが以前に属していた学校とはまったくちがう。 というより、正反対に位置するといったほうが近いかもしれない。
高校や大学が幼稚園に似ているように、会社は山賊にとてもよく似ている。 山賊は群れをなして山に巣くい、その縄張りに入ってきた者を襲っては金品を略奪する。
お金儲けのためなら何でもする。 仲間のおきてを破った者は平気で殺すし、集団として生き残るためには、身内だって平気で切り捨ててしまう。
まさに会社と同じだ。 企業はもちろん人を殺しはしないけれど、規則を破った社員はすぐに解雇されるし、たとえちゃんと働いていたとしても、ちょっと社の利益がでなくなると、罪もないのに軽くクビが飛ばされてしまう。
口減らしというわけだ(この辺は、大企業になればなるほど、無造作に、無情にクビをきる傾向があると思う)。 明治に創業して100年以上つづいている老舗など、これまでどれだけのクビをきって生き延びてきたことだろう。
頭領(社長)の首をすげ代えてでも生き延びようとするあたりは、山賊を超えて怪物に近いかもしれない。 だから、会社に就職したあなたは、さしずめ「山賊の新入り」といったところだろう。

あなたもやっとお金儲けの一味になったわけだ。 せっかく入れてもらえたのだから、企業は利潤を追求する組織だという根本のところを、いま一度確認しておこう。
裏を返せば、会社側は金儲けに役立たない者は必要としていない、ということでもある。 ちなみに、各地の山賊を束ねて上前をはねる、その地方全体を統括する大山賊というのもいる。
この大山賊は、あちこちに巣くう山賊たちをおどかしたり、巻き上げたりもするが、一方で川に堤防を築いたり、道路をこしらえたりと地域の役に立つこともしてバランスをとっている。 上納金を納めなければならないけれど、この大山賊のおかげで平和が保たれているので、あちこちの山賊たちもこの大山賊だけには逆らえない。
この大山賊の名を「国家」といい、上納金を「税金」と呼ぶのはご存じの通りだ。 だから、会社の金儲けはまわりまわって社会の役に立っているわけで、あなたもお金儲けに加わったことを恥じる必要は毛頭ないし、むしろ社会に役立っていると誇りに思ってもいいくらいだ。
ただし、自慢にはならない。 どんな優良企業に入社したとしても、それがお金儲けを目的としていることに変わりはないし、そこに入ったあなた自身がえらくなったわけではない。
山賊の一味という事実は、それ以上でもそれ以下でもない。 そこのところをまず、ちゃんとわきまえておかないといけない。
お金儲けの集団の=貝であることを忘れすにいよう。 会社の動向に注意する必要があるわけ友人の勤め先が倒産したことがある。
ある日、友人が出社すると、専務に呼ばれ、大きな模造紙を手渡された。 「これを玄関に貼っておいてくれ」何だろうと思って、玄関のガラスに貼りだして驚いた。
会社が倒産したことを通知する貼り紙だった。 寝耳に水だった。

自分の席にすわってぼんやりしていると、やがて怖そうな男たちが会社に入ってきた。 オフィス内のロッカーや机に差し押さえの紙をべたべたと貼っている。
債権者から依頼を受けてやってきたその筋の者にちがいなかった。 友人はあわてて机のまわりを整理しだし、私物をカバンに確保しはじめた。
こんな例もある。 某出版社のマンガ雑誌の編集者はある日、マンガ家の家で画稿の上がりを待っていた。
駆けつけたアシスタントやほかのマンガ家に混じって、スクリーントーン貼りを手伝っていた。 そこへ1本の電話が入った。
友人のマンガ家からだった。 「ほんと?ちょっと待って」マンガ家は受話器をもったまま、編集者にいった。
「あのー、おたくの会社、倒産したっていってますけど」編集者は電話をかわってもらい、事情を聞くと、立ち上がった。 「すみません。

社へもどります。 仕事はそのままつづけてください」編集者がいなくなると、一同はばたりと手を止めて顔を見合わせた。
「あそこがつぶれたとなると、いまやっているこの仕事は何なの?」遊んじゃえっ、と、マンガ家たちは遊園地へでかけた。 一方、会社へもどった編集者は、自分の会社がほんとうに倒産したこと、社長がゆくえをくらましたことを知った。
会社の危機は、その最後の瞬間まで一般社員に知らされないケースが多い。 幹部はともかく、一般社員レベルでは、社内にいる者より外部の人間のほうが会社の動向についてくわしいということもある。
某証券会社が倒産したときは、自社の破綻をテレビ・ニュースではじめて知ったという社員も多かった。 が、中には破綻報道の数週間前から、危機を察知して就職活動をはじめていた社員もいた。
破綻が発覚した後も、多くの社員は就職活動をする余裕がなく、業務整理の事務に忙殺された。 顧客に関わりのない部署は比較的余裕があったが、そうした過去の学問を捨ててはいけないプライベートというと、デート、飲酒、映画、コンサート、スポーツ、ショッピング、旅行などといった手軽なレクリエーションを思い浮かべがちだが、そうした末梢神経の快楽だけを追い求めているだけでは、人生は豊かにならない。
もちろん、仕事は仕事で一所懸命にやり、いったん仕事を離れたらきれいさっぱり仕事のことは忘れて思いきり遊ぶ(あるいは思う存分に寝る)というのが健康的だが、消えてなくなる快楽を楽しむだけではせっかくの人生がもったいない。 学問をやるべきだ。
中学や高校で教わったような知識を仕入れる勉強をいうのではない。 教養だとか知識だとかいうのは、仕事上でも必要になってくるだろうし、何も知らないでは人づきあいもできないから、一般常識や時事問題はつねに仕入れておくべきだ。
それは当たり前のことだ。 ここでいう学問は、もっと専門的な学問のことを指している。
人生の快楽は、大きくわけで3つある。 1つは家族を養い、子孫を育て、その成長を見守る喜び。
これは人間が原始の時代からもっている「本能的な快楽」といえる。 2つ目は自分の職務に精通して、自分の仕事こそもっとも困難な仕事だと感じながらさらに精進していく、いわば「プロの快楽」。

そして3つ目の究極的な快楽が、この「学問をする快楽」だ。 江戸初期の学者は朱子学から出発し、それに飽き足りず、孔子の原典に立ち返ることが大切だと主張した。
彼の学問は、ありきたりの知識を習うのではなく、人生の意味と価値とをみずから考えていこうとする能動的なものだった。 仁斎は京都堀川に古義堂という塾を聞き、門弟3000人を集めたという。
弟子は公卿から富商の子息、農家の息子まで広い階層におよんでいたが、なぜ彼の学問がこれほど広く、多く人気を獲得したのか?それは純粋におもしろかったからにちがいない。 飲む打つ買う、と、およそこの世の道楽という道楽を経験しつくし、それらに飽きてしまった大庖の若旦那が、もっとおもしろいものはないかしらとさまよい、たどりついた先が学問だったといえる。
そうやって快楽を味わいつくした人たちが、酒を飲み、ご馳走を食べながら仁斎の講義を聞き、学問の快感に酔いしれていたわけだ。 おそらく、学問ほどおもしろいものはない。
孔子を勉強しろというわけではない。 歴史学でも、経済学でも、数学でも、物理学でも何でもいいだろう。

大学の卒論に書いた題材など、テーマとしてはうってつけかもしれない。


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